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大きなつばさがほしかった。 広い背が、たくましい腕が、高い背丈が。 どんな事態にも冷静に立ち向かう心のつよさが。
出会ったその日から、すべてを持っていたわたしの師匠に、あっという間に釘付けになった。 めざすべきところ、志すひと―――。 師匠に対するそれは、むしろ嫉妬に近いものだった。
「師匠。どうやったら師匠みたいになれますか?レベル50くらいになったらなれますか?」 「…突然何を言い出すかと思えば」 ノインの師匠、イザヤールは厳格だ。今日も天使界にある山麓で剣の手ほどきを受けていた。 弟子が精根尽き果て地面に倒れ込むまでそれは続いた。 四肢を投げ出し横になり、もうつばさを動かす気力も残っていない。いつだって全力でイザヤールと打ち合っている。 けれど師が、その本気をかいま見せたことなんて一度もない。 天の理が、師に勝つことなど許しはしないと解っていても、少しも及ばない実力が、口惜しい。 「わたしは、師匠みたいになりたいんです」 「…ノイン」 背を向けたまま呟かれた弟子の言葉に、イザヤールは複雑な表情を浮かべたが内心の喜びが隠し切れてはいないようだった。 弟子の視線がこちらに向けられていないのが救いだとばかりに、咳払いををして顔色を整える。 「…まあ、はげたくはないけど」 「おい」 「……わたしは、弱い自分がもどかしい」 「………」 イザヤールは足を進める。体力を消耗して倒れ込んだままの弟子に近づき、手をさしのべようとする。 だが。 「いつまでそうしているつもりだ、起きろ、下級天使ノインよ」 「…ッ」 天の理の作用と言うより、ほとんど条件反射にノインは身体を起こす。 そうっと顔を上げれば、厳しい眼差しのイザヤールが自分を見下ろしている。 「私をめざすというのはその、別に構わないのだが、私になる必要はない。お前は私ではないのだから」 「……」 「強さというのはひとの模倣をするだけではないのではないか。己の、己だけの強さ、答えをえて精進すればこその、真の強さなのではないか」 「…そうでしょうか」 ノインは、もっと上級の、オムイの存在も知ってなお、イザヤールの強さに憧れ続けている。 「私は、そのような強さをえられればと思い、お前を弟子にとしたのだが、お前は違うのだな」 師の眼差しが、声の響きが硬さを増して、ノインは慌てて首を振る。 「いいえ、いいえ師匠」 「ならば立て。己の足で。私は出来る限りお前の力となろう。ノイン。お前が、一人前の天使となるまで」 (……ああ) 「はい、師匠」 両手をついて、痛みに耐えながら立ち上がると、かすかに笑みを浮かべたイザヤールが頷く。 ノインは悟る。己の疑問を消化することが出来た。 (わたしはこのひとと離れたくないんだ) 師匠になりたいんじゃない。師匠がほしかったんだ。 ちいさな子供じみた、甘えきったただの独占欲。 そう思うと恥ずかしくなって自然顔がうつむいてしまい、イザヤールが不思議そうに首をかしげている。 「どうした、具合が悪いか。城に戻るのが難しいようならホイミをかけてやろう…」 「いいえっ。おかまいなくっ」 厳しいくせに本人の自覚が無く過保護なイザヤールは、弟子の顔に手のひらを近づけてくる。 それをかいくぐって背の羽を広げる。ふらふらとした頼りないものだがひとりでも飛行できた。 逃げるようにして、イザヤールの先を行く。 いい子でいてまじめに取り組んで、早く一人前の天使になりたい。 でも、一人前になれば、今よりずっとイザヤールと過ごす時間が減ってしまうことは明白だった。 でも、いい。 今までも、これからも、一人前になってもずっと―――イザヤールが自分のたったひとりの師匠と言うことに、変わりはないのだから。 まるで悪いことをしているような、きまりの悪い思いを胸に抱えて頬の熱を持てあましながら。
最初はブラコンとかファザコンみたいな
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