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ちいさな身体、貧弱なつばさ。 本来なら光またたく頭の光輪さえ、傷ついたようにくすんで見えた。 けれど、瞳の奥に、どうしようもない孤独とそれにひとり耐え抜くつよさをかいま見た。
一目でそれを見つけてしまった己に、イザヤールは内心動揺を覚えた。 弟子なんて、今までもこれからも、持つつもりなど無かったのに。 ――――惜しい、と思ってしまったのだ。 誰の弟子にも取られず、見いだされずいる幼い天使。 私ならば。 「私の弟子になるか?」 唐突に、あえて試すよう、強い気迫を隠さず幼子の瞳をのぞき見た。 上級天使に対するおそれも知っているようであるのに、その問いの真意を見いだすかのように、子供の瞳は真摯にイザヤールの漆黒を見返してくる。 「はい」 子供特有の高く澄んだ声がまっすぐに、イザヤールの胸に落ちてくる。 なぜか安堵が満ちた。イザヤールはすでにこの時、師としての感慨をえていたのだ。
それからのイザヤールは己の職務もおろそかにすることなく、余暇のすべてを弟子に注ぐほどの勢いで師のつとめに励んだ。 彼の見込み通り、勤勉に弟子はそれに応え、日に日にたくましく一人前に近づいていった。 けれども、厳しい修行の合間、時に怪我が痛み、時に己の無力にひとり涙する弟子の姿もイザヤールは知っている。 そこで安易に手を伸ばさず、わざと突き放し見ないふりを通す。 次の日には笑顔で挨拶を述べて現れる弟子を、イザヤールは何より誇らしくかけがえなく思うようになっていた。 そんな日々が続き、いくつかの星が巡り天使界でもいくらかの年月が過ぎた。 イザヤールの弟子は相変わらずまじめに励んでおり、もうじき一人前と認められる時期が来る。 「あなたたち、まだそんなことやってるの、相変わらずねえ」 土と泥に汚れた弟子を背負ったイザヤールを出迎え、上級天使ラフェットは呆れたため息を吐いた。 弟子が成長の兆しを見せるたびに師はその手を貸す機会を減らしていくもの。 けれどこの師弟と来たら、最後の最後まで一昼夜剣の打ち合いなど泥臭い修行風景を展開し続けている。 「かなり上達したとはいえノインにはまだまだ隙が多い。実戦でいざというときに対処できなければ意味がないだろう」 「はいはい。で、ぶっ倒れた弟子を抱えて連れて帰ってきて、それって実戦だとどうなんのよ」 「放って帰るわけにもいかんだろう」 ほとんどからかうつもりで言っているのに、イザヤールはまじめくさって仏頂面に返してくる。 「待ってて、今お湯の支度をしてくる」 子供であって師弟とはいえ身支度の面倒まで見るわけにも行かず、弟子が修行の終わりにそのまま寝入ってしまったときはいつもラフェットを訪ねる。 ラフェットが部屋の奥に下がっても、寝椅子に弟子を寝かせ、イザヤールはとなりに腰を下ろす。 手を伸ばして、やはりホイミをしてやるべきかと何度も逡巡してはもとの体勢に戻る。 けっきょく、弟子の意思を尊重する。ノインは師に似てわりと頑固なところがある。 「イザヤール、着替えはこれで…」 しばらくして戻ってきたラフェットは、目に飛び込む光景に眉を下げる。 まったく、距離を置いてるとか甘やかさないとか、何の説得力もないったら。 弟子の寝顔を見守るイザヤールの眼差しは、ラフェットが冷やかす気もなくすほど。 (イザヤールのほうが、ちゃんと弟子離れできるか心配だわ)
ラフェットさんはケンカ友達兼お姉さんポジション。(逆らえない)
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