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2009 10,19 10:11 |
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ウォルロ村の守護天使となり、一人前と認められたばかりのルインは奔放なところのある若者だ。 けして嫌悪するほどではないのだが、つかみ所のない思考回路や言動を目の当たりにするたびに、師イザヤールは言葉を詰まらせ渋面になったものだ。 そのルインでさえ、今は立派につとめを果たし、今日も守護するウォルロ村を見守りに来ている。 感心な様子をイザヤールは感無量の思いで見ていた。が。 「…何をしているのだ、ウォルロ村の守護天使ルインよ」 「あ、元ウォルロ村の守護上級天使、我が師イザヤール」 ――――私の肩書きは呼ばなくていい。しかも元をつけてまで。 たしなめて咳払いをひとつして、イザヤールは改めて村で飼われている犬と戯れているとしか思えない弟子に問いを重ねた。 人々は彼ら天使を見ることは出来ないが、感覚の優れる動物たちは彼らの存在を感じるものも多い。この犬も多分に漏れず、頭を撫でるルインに尻尾を振って甘えている。 「なでなでしているんです」 「だから、それはなぜだと聞いているが」 「人間の真似です。この子は老婆の指輪を見つけてくれたので。人間は犬を誉めてあげるんですよ」 「そうか…」 人間をよく見、観察して、困っていることはないか助けられることはないか気を配れと教えたのはイザヤールである。 ルインは何ら問題なく守護天使としてのつとめを果たしているのだが、こういったところを見ると、ただ模倣しているに過ぎず行動に起因するところは理解し切れていないようだと、容易に知ることが出来た。 「まあ、はじめはそれでいいだろう。ただあまり目立つ行動は控えるように」 「はーい」 以前のように子供を真似て、石を川に投げてみたり地面の落書きを放置されていたりは困る。おかげでウォルロ村は一時期怪談話で持ちきりだった。あのようでは困る。 ルインの返事も淡々と、真剣味に欠けるのが若干気がかりであるが、この者を相手にするようになりいくらか寛容になったイザヤールである。とりあえず弟子を信用しておく。 「うむ。ではそろそろ帰るか?」 「我が師イザヤール。オーラ集めたのでボクも誉めてください」 犬と離れ立ち上がったルインが、期待の眼差しで高い位置にある師の顔を見上げてくる。 「………」 「なでなでしてください」 一人前にもなってなんと子供じみたことを。なんと言って諫めようかと思ったのだが。 「…うむ、よくやったウォルロ村の守護天使ルイン。今後も励むように」 「はーい」 天使界ならいざしれず、ここは人間界。 よい子を大人は誉めるものだ、と、イザヤールも弟子に倣って人間らしく振る舞うことにした。
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