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※「我が名は破滅」最終話の出来事をガトゥーザ達は覚えていないので、やっぱり天使界関連のことは何も知らず、見えないままです
「ちょっとウォルロ村で人と会ってくる」と、ひとりで出かけたルインが、男を連れて戻ってきた。 ガトゥーザも人並みに長身だが、彼は規格外に長身で手足が長く、無駄のない体つきだ。 キオリリは真っ先に「隙がない…出来るね」と呟き、引き締まった眉と意志の強そうな目元、口元をしており、なかなかのイケメンでもあった。 ただ、ハゲだった。 「いや、ハゲじゃなくて剃ってるんだよ」 とりあえず向かい合って対面したところで、ルインが真っ先にそう言う。 「…誰も私の頭髪の話はしていないだろう」 そこにすかさず彼が突っ込む。通りの良いバリトンはちょっと女性の心を掴みそう。 立派な体格で隙が無く頭髪もない美声イケメン(仲間達印象)は、ルインとは旧知の仲で、子どもの頃からの師弟関係である、と紹介された。 「イザヤール、という」 「我が師はちょっと前まで忙しかったんだけど、用事が片付いたんでこれからはボク達の旅とかにも付き合って貰うことになったよ」 簡単に設定を練った結果、そう言うことになった。 それを信じようが信じまいが、ガトゥーザはふーんと気のない様子で頷いてくれるが。 「ああ、つーことはあれか。世界を笑いで平和にしてこいとか言うシビアな旅芸人のお師匠か」 「その設定なつかしいー」 イザヤールはさすがに取り乱した様子は見せなかったが、髪がないせいかいかんせんこめかみが震えているのが目に見えた。 「我が師はボクの剣のお師匠だよ。一般常識とか呪文も教わってたけど」 「…ルイン、剣使わないよね」 「使わないのか?」 キオリリが思わずと言った様子で突っ込んで、イザヤールのこめかみはぴくぴくっと震えた。 使わないねえ、などと、弟子は平然とのたまう。人間界に降りていろいろな武器を手にしてみて、ルインにはどうやら剣は合わなかったことがわかったから、あれから剣は持っていない。 「…一般常識までってことは、ほとんど教育係?家庭教師みたいなものだったんじゃないの」 「雇用の契約ではなかったが、まあ似たようなものだ」 オマールがふと思いついたように尋ね、イザヤールは頷く。 「なら悪いけどちゃんとしつけて貰いたかったよね。この子無茶すぎ。無謀すぎ。ボク魔法使いだったけど賢者に転職して僧侶もやって、何回蘇生したかわからないんだけど?」 「オマールはぶっちゃけすぎだ。しかし反論する言葉がねえ」 「イザヤール、さん?ええと、いきなりごめんなさい。でもルインはちょっと、その辺は相変わらず危なっかしくて」 「…そうか」 イザヤールの顔色が、今やはっきりと解りほど変わっていた。 仲間達からの不満が、早速降り掛かる。しかも誰ひとりとして否定しない。 今までいたらない弟子の旅路をともにしてくれた彼ら。彼らがこれほど言うのだから、弟子の無謀はよっぽどのものであったろう。 「…ルイン」 「うん?」 今までのみんなの話をきいていたのかいないのか、ルインはひとりでみかんを剥いて丸々一個頬張る試みに興じている。 「こちらへ来い。お前とはまだまだ積もる話がありそうだ」 がしっと、首根っこを掴まれる。ルインの逃げ足は速いから、真っ先にこうして捕まえねばならなかった。 「私の話はしたな?では今度はお前の話をきかせて貰おう。どんな旅をしてどんな振る舞いをしてどのような無茶をしたかだ。あれほど周りを見ろ目立つな無茶をするなと…場合によっては一から鍛え直しだ!いい加減大人になれおまえは!」 「わかったよ、わかったよ我が師。あ。じゃあみんな、そういうわけだからよろしくね!」 顔を怒りに染め、ぶつぶつお説教をはじめながら宿屋を退場していくイザヤールと、ずるずると引きずられながらも、にこにこと余裕の笑顔のルイン。 「…ありゃあ堪えねえな」 「うん、嬉しそうだからね。お師匠様でもルインの無茶は直せないかもね」 ずずずとお茶をすすりながら、騒がしく去っていた師弟を目で追う。 でも、最近すっかりおとなしくなってきたルインが久々に見せる、明るい表情をしていた。 それがわかる程度に、彼らは付き合いが長いのだ。 とりあえず良かったんじゃねと、目配せをして、飲み物の追加注文をする。 オマールはひとり、蘇生の回数が減るんならなんだって良いと、不満げに零していた。
仲間に紹介編。
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