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「人助けの旅、ね…それはまた立派だな、オイ」 「ガトゥーザ、台詞が棒読み過ぎよ」 なんで旅をしているのか、という問いにルインがこう答えると、ガトゥーザは投げやりに頭をぽんぽんしてくれた。 「で、旅芸人がなんでそんなことになってんだ?世界を笑いの渦に巻き込む修行の旅ッてんならまだしも」 「うん、別にそれでも良いと思うんだけど。人を喜ばせれば結果時にいいわけだから」 「…?意味がわからん」 頭から疑ってきいていたのだが、ルインの口ぶりにガトゥーザもやや態度を変える。 「いっぱい人助けをするまで帰ってくるなって言われてるんだ」 もっとも巧妙な嘘とは、真実を織り交ぜてつくられるもの。 微妙に半笑いを浮かべるガトゥーザとキオリリにルインは平然と言ってのけた。 (別に信じられなくてもいいんだけど) 「ガトゥーザ達は、それぞれ道を究めるための旅なんだよね」 「おう、ま、大体世界一周くらいはしておくかと思ってる」 「アタシは剣を。ガトゥーザは神の教えを広めるって感じで、具体的な目標はないんだけどね」 世界一周。人の足で歩いてどれだけかかるのか、ルインにも想像がつかない。 けれど短い生のなかで成すには、ずいぶんと壮大に思える。 「まー、いつでも抜けていーし、いたけりゃどこまでも着いてきていいぜ」 「うん」 投げやりにきこえるが、度量の広いことをさらっと告げられる。 ルインは内心それに驚きながら、笑って頷いた。 人を疑いもするし、妥協も知っている。情もあるし、距離感を保っている。 いい、人間たちだ。これから短いかも知れないが、たとえ長くても、つきあっていけるだろう。
「あら、あなた達そろそろ出発?」 一通りの確認と話がまとまって、席を立った三人に気付いたルイーダが声をかけてきた。 「おう。紹介ありがとよ。とりあえずこの三人でつるんでいくわ」 「わかったわ。ガトゥーザ、キオリリ、ルインの三人で登録ね。うち解けたみたいで良かった」 そうかね?肩をすくめるガトゥーザ。キオリリは苦笑。ルインはルインでルイーダに礼を述べる。 「そうそう、あなたたち。長い旅になりそうならもう一人くらい仲間がいた方がいいんじゃないかと思って、魔法使いなんかどうかしら?」 「もう一人?」 ルイーダはそうよ、と頷き、手元の名簿をぱらぱらとめくる。 「敵に囲まれたときなんか、魔法使いの呪文があればずいぶんと楽よ」 細く整えられた指が、探すページに辿り着いたのか止まる。 「このひと、オマールさん」 「…うまそうな名前だなオイ」 「海老?」 とりあえず名前のインパクトは大だった。 大きすぎて海老以外のイメージが湧いてこない。 「…海老じゃなくて、16歳の男性よ。出身はサンマロウ。呪文の資質は十分」 「魔法使いねえ…あのたぐいは気難しいヤツが多いんだよ…で?呼べるのか?」 「ええ、ちょっと待って…あら、今は外出しているみたいね」 ルイーダの名簿に登録された人物は、いつ呼び出されても連絡が取れるようになっている。 彼女がガトゥーザパーティーにぜひ、と考えたオマールなる魔法使いは、今不在であるらしい。 「じゃあしょうがねえな。いつ戻ってくるかもわからねえんだろ?またの機会にするわ」 「そう?残念ね。あら」 あっさりと魔法使いを諦めたガトゥーザに、ルイーダは名簿を閉じながら応じたが、顔を上げて目をまたたいた。 「ん?」 その視線を追うようにルインが振り返ると、足下までローブで覆われた、細身の少年が静かに佇んでいた。 「そこ、邪魔なんだけど」 「うん」 ルインは素直に頷いて道を譲る。顔の横でくるんとカールされた髪は鮮やかなピンク。 眼は細く吊り上がり、狐か何か、動物を彷彿とさせる愛嬌のある顔立ちをしている。 「本当にいいタイミング。オマール。この人達があなたの仲間よ」 「ええ?」 「なんだとお?」 ルイーダが顔を輝かせ、胸を張ってそう告げる。 いかにも迷惑そうに顔をしかめたのはオマールで、ガトゥーザはそれも含めてはっきりと不快の表情を向けた。 「…この人達?」 「んだよ、文句があんなら言ってみろってんだ。べつに無理に組んでくれなくたっていいんだぜ?」 「もう、ガトゥーザ!そうやってすぐに絡むのやめなったら」 (…ガトゥーザって人との交流が基本疑念から始まるんだなあ) 顔立ちは笑っているようにも見える猫目で、オマールは誰が見ても明らかな不満を示し、 それを受けて立つガトゥーザはやはり喧嘩腰で、 キオリリは若干呆れたようにガトゥーザを制し、 ルインは黙ってそれを観察する。出会い頭から雲行きが怪しくなってきた。 「君、僧侶?で、そっちは戦士だけど女性?と…もうひとりは子供みたいだし」 オマールは、眉をひそめたまま並ぶ三人を見渡して、 「本当に役に立つの?」 「アホか!このガキャあ!てめえなんぞこっちから願い下げだ!!行くぞ、キオ!!チビ!!」 はっ、と鼻で嗤うように言い捨てられ、ガトゥーザの脳天から沸騰した湯気が見えるようだ。 「ルイーダ!あんたもっと人を選んで紹介してくれ!!」 「ちょ、ちょっとガトゥーザ…!ご、ごめんねルイーダさん!」 ルイーダにまで怒りの矛先を向け、ガトゥーザはずんずんと酒場を横切って出て行ってしまう。慌てて頭を下げながら、キオリリもそのあとを追う。 「…あら、言われちゃったわねえ」 それを見送って、ルイーダは少しも堪えた様子はない。 「で、あなたは行かなくていいの?ルイン」 「うーん、うん」 ルインは首を傾けながら、ルイーダに頷く。その視線の先で、オマールがふいっと顔を背け、違う方向へと歩いていく。 「あ、ルイーダ。仲間を紹介してくれてありがとう。とってもいい三人だと思うよ」 「あら、そうかしら?いきなりこんな事になっちゃってるけど?」 「ばらばらな人たちが一緒の方が、見てる方は面白いよ」 ルインはにっこりと笑顔を浮かべると、軽い足取りでオマールの向かった方へと歩いていく。 ルイーダは口元に小さな微笑みを浮かべながら、登録名簿のガトゥーザパーティーに、オマール、と勝手に付け加えるのだった。 (一番面白いのは、あなたよ、ルイン。解っているのかしら) 今はばらばらでも、けっきょくは良いパーティーになるだろう。そう導くのは、きっとあの不思議な少女だ。
「……」 てくてく。てくてく。 「……」 男性の広い歩幅に、ちょこちょことせわしない足音が続いていく。 隠れて追うこともたやすいだが、あえて姿も見せて、着いていく。 「…なんなの、君」 「ルインだよ、オマール」 やっと立ち止まってくれた、と。ルインはお近づきの一歩として名前を名乗ってみた。 不快そうに寄せられた眉間の皺が、いっそう深くなる。名前を訊いたんじゃないよ、と言われる。 怯むことなく今度は質問してみる。 「オマールはどうして旅をしてるの」 「魔物が嫌いだから。すべての魔物をこの世から滅ぼしたいから」 思ったよりあっさりと答えてくれた。まだ若く通る声が、低く不穏に沈みながら。 「滅ぼしたらいいんじゃない?」 それに同じくらいあっさりと答える。 「あんた達みたいな脳天気な人たちとほのぼの旅行する気はないんでね。悪いけど勧誘したって無駄だよ」 オマールの顔立ちは、それこそ見ている者をほのぼのとさせる穏やかなつくりなのに。 表情は見て解るほど不機嫌きわまりないし、口から出るのは物騒で暗い思いばかりだ。 (これも、ギャップって言うのかな。面白い) 「…じゃあ、見るからに屈強で殺伐とした人たちだったら、オマールは旅をするんだね」 「そうだね。君たちよりはずっと魅力的な旅の連れだ」 「でも、それって信用できる?」 ルインが首を傾げて伺う言葉に、オマールは眉をひそめた。 「どんな目的でも、一緒に行動するんだから、寝込みを襲われたりしたらたまんないじゃない?その人達って、やっぱり信用できる?」 明るい日射しのなか、ルインの黄色の眼差しがオマールをじっと見つめる。 どんなに懐疑心でがちがちの人間でも、その瞳のなかに一切の偽りを見つけ出すことが出来ないような。 (この子…子供?いくつ?) オマールが思わず内心の動揺を覚えるほど。目の前の少女は不思議な引力で訴えてくる。 「ガトゥーザは言ってくれたよ。あの、緑の人だけど。いつ抜けてもいいし、いつまでも着いてきてもいいって」 「…それとこれとなんの関係が…大体、その言葉だって信用」 「しなくていい。信用しなくてもいいよって、言ってくれてるんだよ」 っていうか、信用してもいいし、しなくてもいいよって事だけど、とルインは口の中でつぶやいて、再度オマールを見る。かえって迫力すらある、いつもの真顔で。 「一緒に行こうよ、オマール」 「……だから、なんで」 と、そこへ。 「あっ、あぶなーい!」 酷く狼狽える子供の声。警告の知らせ。 オマールの視界に、ルインめがけて飛んでくる、手のひらサイズの球体がうつる。 「……!」 ぼっ!と、空気の燃える音。飛来した丸いものが炎を纏い、地面に垂直に落下した。 メラによって阻まれたボールは、地面とふれあった瞬間鎮火して消えていく。 「ごめんなさーい!怪我はないですかあー!?」 キャッチボールでもしていたのか、子供が茂みから飛び出してきて頭を下げに来た。 焦げたボールを見てぎょっと目を瞠り、杖を持つオマールの姿とその形相に、そそくさと退散していく。 「悪いことしちゃった」 ルインは子供の背中を見て、ぽつりと零した。 「君…わざと…」 オマールはあきれ果てるように、言葉を空気と共に吐き出した。 解っていた。この子は、ボールが自分に飛んでくることも承知で、微動だにせずオマールの反応を試したのだ。 「人を試すなんて趣味が悪すぎる」 「や、単なる観察なんだけど。でもこれでボクが見かけより抜かりないって事も解ってもらえたかなって」 「ただのバカじゃないか。付き合ってられない」 背を向けて歩き出すオマールに、再び小走りで着いていく。 「でもボクはオマールが優しいって事解ったよ」 「うるさいよ、君。あと着いてこないでよ」 追い、追われの形なので、二人は一列に並んで道を歩いていく。端から見るともう立派に二人連れ。 「おおい、チビおせーぞっ!って、げっ!!」 向かう先に立っているふたりの姿にルインはにっこりとする。オマールはげんなりと、肩越しに頭ひとつ分は小さい少女を振り返る。 「君、性格悪いって言われない?」 「タチ悪いとは良く言われる」 にこにこと笑顔を返し、ようやく観念したらしいが渋るオマールの背を押してルインは二人の元へ進む。 ガトゥーザは納得できていない様子だし、またしばらく揉めそうだなあ。 (それもまた賑やかそうで楽しみだ) ルインは今何が起こっても、うきうきと心弾む気持ちだ。。
オマールが仲間になった!
最初はぎすぎすとしてました。
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